ピリオドとスタート

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「え!」 「ん? いさみ、なんか言ったか?」 「なーんでも☆」  そんなやり取りをしながら俺たちは歩く。  もうすぐ十月。  二学期に入ってこれから青春を謳歌していく俺たちは、まず、妹の恋という行事を終わらせた。  秋はどこか儚げで、俺たちの青春をもより一層切ないものにする。  玲も俺のことを慕ってくれ、千鶴もこんな俺を支えてくれる。  隣に妹がいる。  どんな妹でも、俺の妹であることは昔も今もこれからも変わることがない。  妹のためにと思っていたけど、俺も妹のように強くなれたら良いなと思う。  俺は妹が妹で本当に良かったかもしれない。他の兄妹より、俺たちの方がきっと楽しいに違いない。  俺がどこか誇らしげになっていた最中、大通りに差し掛かるとそこにはあの人物がいた。  ――乃蒼ちゃんだ。  俺はそれを見て少し心臓が逸る。  恐る恐る妹の顔を窺う。  すると反して妹は涼しい顔をしていた。  乃蒼ちゃんの方を見ると、俺たちに気付いた様子で、緊張した面持ちでいた。  俺たちが乃蒼ちゃんの前を横切ろうとしたときだった。 「あの! いっちゃん!」  乃蒼ちゃんが妹に声を掛けたのだ。  妹は何食わぬ顔で、 「ん? 何?」 「髪……切ったんだ」 「うん。切った」 「似合ってる、すごく……」 「有難う」 「あの」 「何?」 「私がもし、また付き合ってって言ったらどうする……?」  乃蒼ちゃんがそんなことを言った。  俺はそれを聞いてはらわたが煮えくり返りそうになった。 「おい、乃蒼ちゃん、それは――」  俺が我慢出来ずつい口を吐いて出た。  すると前のめりになった俺の身体を妹が制すと、今まで見せたことがない満面の笑みを浮かべると、 「ごめん、私、もっと良い女と付き合うつもりだから!」
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