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学校という閉鎖空間、社会の目。そういったプレッシャーに乃蒼ちゃんは耐えられなかったのかもしれない。
妹の場合は、GIDで、もう、どうしたって変えられない性嗜好。ジェンダー。
乃蒼ちゃんは、異性愛者と妹から聞いていた。
だから、妹のことが好きであっても、妹が捧げる愛情に見合うものを渡せないと思ったのかもしれない。
なんだか乃蒼ちゃんは本当に真剣にあれから考えてくれていたようだ。俺は、
「そっか。多分だけどあいつは乃蒼ちゃんが避けなければ普通に接してくれるだろうから、友達でいられるならいてやってくれないか? あいつのこと知っているのは多分、乃蒼ちゃんだけだからさ」
言うと乃蒼ちゃんは申し訳なさそうに笑って、
「はい。いっちゃんが友達でいてくれるなら是非」
「ああ」
言って俺も微笑んだ。
「おーい! 兄貴―!」
「あ、すみません! 長話してしまって! では、また」
「おう。じゃあな。おーい今行くー!」
言って俺は乃蒼ちゃんの前から立ち去った。
乃蒼ちゃんも反省してくれたみたいだったし、今日の妹は本当にカッコいい男だった。
「おーい、いさみ! 俺、お前に負けないような良い男になるからさ!」
「はー? 何千年後の話―?」
「あと一年後」
「ホントかよ。そう言っているよ? 兄貴同盟の諸君」
「何かな? いさみちゃん、私はいつからはじめちゃん同盟なのかな?」
「ぼ、僕は今もこれからも先輩同盟ですよ! 千鶴さんもなんですか?」
「はえ!? そそそそそんなことないんだよ! ただ私ははじめちゃんの保護者として加入するっていうか!」
「ふふーん。なかなかいい感じなんじゃないんすか、兄貴」
「はいはい。もう、なんでもいいよ。いさみ、お互い、良い彼女作ろうな!」
「せ、先輩! それは僕も女の子扱いで望みはあるってことで良いですか!?」
「あ、玲……うん。まあ、お前も女の子だからな」
「きゅうんっ。先輩、大好きですっ!」
玲が俺の腕をぎゅっと抱きしめてくる。
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