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江波が兵頭を運命の番だと認識したのは、入社式の後、営業部での歓迎会の時だった。
営業部内での配属が決まっていないため、あちこちの課に連れまわされていた中、営業一課にも挨拶にやってきた。
「兵頭巧です。よろしくお願いしますっ」
ビール瓶を片手に差し出しながら、挨拶をする。
体育会系のノリのある元気で素直そうな兵頭に好感を持ちながらも、Ωの嗅覚が兵頭が運命の番だと告げていた。
そばに寄るだけで、身体が反応しそうになる。
なんとか、欲情しそうなのを必死に抑えながら、グラスを差し出す。
しかし、肝心の兵頭のほうは、そういった反応もなく、ニッコリと笑ってビールを注ぐと、次のところへと挨拶に移動していった。
離れていく兵頭の背中を見て、大きくため息をつく。
Ωに無反応な兵頭を疑問に思いながらも、番の相手が気づかないのなら、このまま吉澤と一緒になれるかもしれない、その時は、そう思っていた。
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