0人が本棚に入れています
本棚に追加
-
私は幼い頃、「しあわせ」を「しやわせ」と言っていた。
美味しいものを食べた時。
遊園地に行って楽しかった時。
欲しかったものを買ってもらった時。
「しやわせ~」と言いながら“にしゃっ”と笑った私の顔を、
父も母も微笑みながら「とっても可愛かったよ」と語ってくれた。
私が就職した年、父母は交通事故で他界した。
実家のクローゼットに仕舞われていたアルバムには、
「しやわせ」な顔をして笑う私の写真が年齢順に綺麗に整理されていて、
ページをめくる度に、
はしゃぐ私にカメラを向けていた父の姿と、
現像された写真を微笑ましく眺めながら1枚1枚大切にアルバムへ貼り付けていた母の姿が思い出された。
もう二度と父にも母にも、
私の「しやわせ」な顔を見せられないのだと思って涙が溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!