プロローグ

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プロローグ

昔から勉強はできるほうだった。 運動はまあまあ。ピアノは何回か入賞したことがある。 先生からの評価もいいほうだと思うし、クラスでは副委員長を任されている。 友達もいる。 親との衝突もないし、とくに怒られることはない。 不器用か器用かと聞かれたら、器用なほうなのだろう。   高校2年の夏までは、これでやってきた。 そして、これからもこんな感じで毎日が過ぎていくのだろうと、信じて疑っていなかった。   旧音楽室には、私が弾くノーミスのショパンのエチュードが響く。 穏やかな心は穏やかな音色を奏でて、我ながら上出来だと密かに微笑む。 「すごい表面的だね」   そう、彼に言われるまでは、私はこの狭い世界の中で無敵だったはずなんだ。
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