君とホットケーキ

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「帰ろう」  帰ろうって、どこに?  わたし、どこに行けばいい?  もうあのアパートには帰れない。今は、帰りたくない。  いつもだったら、会えることが嬉しくて早足になるはずだった。  今日みたいな日は、ランチに行こうって誘うのに。  平日なら晩ご飯は何を作ろうかなって、考えながら会社を出るのに。 「疲れたな……」  歩くたびに、足は前に進むことを拒否しているみたいに重い。  エレベーターに乗ると、虚しさがこみ上げてくる。  また泣きたくなってくる。  ホットケーキと同じだ。  わたしは失敗したんだ。  初めての恋。初めての仕事。どっちも失敗。  ホットケーキの一枚目は失敗。  だったら、二枚目はうまくいくの? 最初からうまくいくことはないの?
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