君とホットケーキ

6/22

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 幸せいっぱいの時の言葉も、ケンカの末に吐き出された言葉も、変わらない気がして。  よくわからない、もやもやした感情がわたしを責める。 「なんなのって……」  それってもう、別れたいってことだよね。  もう一緒にいたくないってことだよね。  プツプツと生地に穴が見え始めて、ホットケーキを返しながら、またため息が出てしまった。 「ほら、失敗」  ムラのある焼け方。いびつな丸い形。美味しそうなんて、お世辞にも言えない。  今日三度目のため息が零れた。 「……どうしてかな」  晴斗先輩が寝ているであろう部屋を見たら、涙が溢れてきた。  涙がフライパンの中に落ちて、ジュワって音をたてる。  すぐに消えちゃう涙。すごくあっけなくて、急に寂しくなる。 「なんで、失敗しちゃうんだろう」  お皿にのせたホットケーキは、まだら模様。  一枚目は必ず失敗。そんなこと、わかってた。わかっていたはずなんだ。  わたしは構わず二枚目を焼くことにした。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加