訓練生になる-2

2/5
前へ
/63ページ
次へ
 午前中の鍛練は水泳で、ひたすら泳がされる。同時に十人が五十メートルを泳ぎ、向こう側へ上がり、スタート地点へ戻る。まるで地獄のように、そのループの繰り返し。  プールが温水なのは助かるが、足は底に付かない。泳げない人は別メニューで、専用のプールで泳ぎの特訓を受けていた。 「貴様らの弛んだ肉体と精神が、逆三角形になるまで泳げ!」  過去に誰かに受けたのだろうか? 微妙すぎて笑えないフレーズを聞きつつ、必死で泳ぐ。竹刀を片手にプールサイドを見回る教官たちが居るので、サボる事はできない。  後で知ったのだが、鍛練に水泳が選ばれたのにも理由があるらしい。水泳は、体に負担をかける事なく筋肉を鍛えられ、息継ぎは、忍耐強い精神を育む。もっとも、そんな裏事情を知らない僕ら訓練生には、虐めとしか思えなかった。  そして、朝食。  大食堂は男女兼用なので、ミヤコを見る事ができる。だが、座る場所は男女別で、班ごとで集まるから、コミュニケーションは無理な感じだった。  ただでさえブルーな所へ、教官が来て、斎藤班の食事を中断させ、立たせる。 「お前の班のベッドメイクがなっとらん! やる気があるのか! 部屋へ戻ってやり直し!」
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加