小話

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秋晴れのある日。 真夏の強い陽射しは和らいだものの、陽を遮るものがない場所では肌にチリッと太陽の刺激を感じる。 それでも、頬を撫でていく風は爽やかで、高くなってきた空と、空の一番高いところにできるというすじ雲が秋の訪れを告げていた。 そんな季節の移ろいを感じながら歩いているのは、キャップを被り、マスクに伊達メガネをかけた男性と、それに寄り添うようにしている小柄な女性。 世間ではスーパーアイドルと呼ばれる逢坂蓮と、その妻、桜香である。 つい先日結婚を発表し、挙式をごく親しい者だけで無事に済ませたばかりの新婚ホヤホヤだ。 今日は自分達の数か月後に結婚した、こちらも同じく新婚ホヤホヤの友人宅を訪問すべく、2人仲良く向かっている。 結婚を発表し、2人のことは周知の事実として定着してきているにも関わらず、未だ手を繋いで外を歩くことが恥ずかしいという桜香を宥めすかして、手を握る蓮の顔は、現在隠されているが、だらしなく緩みまくっていること間違いない。
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