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近しい関係でそういう事があった陽介ならいい病院を知っているかもしれない。
「――病院、教えてくれないか?」
今はもう恥も外聞もかなぐり捨てて、藁を掴む思いで陽介に縋った。
これ以上、壮登の期待を裏切るわけにはいかない。
「不妊治療の権威って言われてる医師がいる病院知ってる。稀少種であるαとΩの夫夫であるお前たちならすんなり受け入れてくれるはずだから」
「ありがとう。なぁ、この話は……」
「言うわけないだろ!俺とお前の仲だぞ」
「ごめん……」
「謝らなくていいからっ。善は急げだ!すぐに調べてやるよ」
親友の心強い言葉に感謝しながらも、それでも不安は拭えなかった。
きっと壮登も気づいている。
でも、それを口に出さないのは彼の優しさなのだろう。
真っ平らな下腹をそっと掌で撫でて、俺はもう一度カレンダーを見た。
もうすぐ発情期がくる――。
その前兆は熱っぽい体の変化に現れていた。
もう一刻の猶予も許されない。
(今夜、彼に相談しよう……)
そう決意して、俺は唇をきつく噛み締めた。
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