発情期の訪れ

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「――それ、本気で言ってるのか?俺がお前の体目当てで結婚したと思ってるのか?」  壮登が怒りを抑えながらも必死に言葉を選んでいることは痛いほど分かった。  下手な事を口走って、これ以上関係を悪化させたくないという彼の優しさ。 こんな時まで優しくするなんて、どこまで出来た人なのだろう。 「思ってないよ……。思いたくない……」 「じゃあ、どうしてそんなことを言うんだ?俺はお前だけを愛してる。お前と出会ったのだって運命だろ?」 「子供を産めないΩなんて……。みんなにいろいろ言われるに決まってる。お前が……可哀想で」 「そんな同情はいらない。周囲に何を言われようと関係ないだろ?俺はお前との子供が欲しい。だから……」 「だって、出来ないものは仕方がないだろっ!」  勢いよく振り返った瞬間、視界が大きく揺れた。  掴んでいたはずのシンクから手が外れて体が傾いていく。  膝が崩れる直前に、壮登の力強い腕が俺の体を支えた。 「や……はぁ、はぁ…。体……おかし…っ」 「蓮?お、おい……お前……っ」 「熱い……体、熱いっ。壮登……っ」  壮登に凭れかかりながら乱れる呼吸に肩を上下させる。  この症状――発情期だ。  さっき飲んだ抑制剤の効果が切れたと同時に訪れたようだ。  自分でも分かるほど甘いフェロモンが体から解放されている。この香りに番である壮登は抗うことは出来ない。  俺を支える彼の呼吸が荒く激しいものへと変わり、腕に長く伸びた爪が食い込んでいる。 「――蓮、ダメだ…。俺も抑えられないっ」 「やぁぁ……!やだぁ……こんな気持ちのまま……で、出来ないよぉ」 「大丈夫!絶対に大丈夫だから……はぁ、はぁ……っ。俺たちの子供を……作ろう!」 「壮登…っ、俺…俺……っ」  俺の発するフェロモンにあてられた壮登はもう止めることは出来ない。  本来もつ、獣の血が子孫を残すために覚醒する。 「蓮……っ、俺の蓮……っ」  後ろから体を支えられるようにして、再びカウンターの天板に両手をつかされる。力の入らない指先で必死につかまりながら疼き始めた腰を突き出すようにして彼の下肢に擦り付ける。  薄いスェットの生地越しに、壮登の猛ったモノの硬さと熱さを感じて、俺は熱い息を吐き出した。  発情したΩとそれに欲情したαに交わりの場所など関係ない。
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