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コウノトリの声
さらりとしたシーツが素肌を包み込んでいる。
重い瞼を震わせながら恐る恐る目を開けると、そこは寝室のベッドの上だった。
俺は全裸の上に羽布団をかけられ、身を縮めるようにして横たわっていた。
広いベッドには俺一人だけ。隣にいるはずの愛しい伴侶の姿は見当たらない。
「俺……ど、した?」
今までの記憶が酷く曖昧だ。
突然キッチンで発条したことはうっすらと覚えている。そして壮登の熱も手の感触も……。
「――う?」
小さく身じろいだ時、ポッコリと不自然に膨らんだ下腹と、後孔に違和感を感じてそっと指先を伸ばすと、そこにはシリコン製の栓のようなものが食い込んでいた。
「これ……何?」
体を起こそうとするが、シーツに擦れた肌が甘い疼きを発して無意識に射精してしまっていた。
「あぁ……あんっ」
慌ててペニスを押さえ込んでみたが、指の間に伝う温かい白濁の匂いが布団の中に広がっていく。
「壮登……どこ?壮登……っ!」
発情中の俺を放置して、またあの男のところに言っているのかもしれないと思うだけで底知れない恐怖を覚えた。
体が震え、下腹の奥がきゅぅっと締め付けられる。
「やだ…っ!壮登…どこにいるの?ねぇ……っ!壮登っ!!!」
取り乱してもシーツを掴み寄せる事しか出来ないもどかしさに涙が溢れてくる。
発情期と言えども、今までこんなことは一度もなかった。
壮登に抱かれて幸福感を得る。でも今は不安が体を支配している。
「ずっと、そばにいるって……言った、じゃんっ」
羽枕に顔を埋めて肩を震わせていると、遠慮がちに寝室のドアが開く音に気付いた。
「――蓮?」
耳に心地よい低く甘い声に顔をむけると、そこにはチノパンとシャツというラフな格好の壮登がいた。
「壮登っ!!」
「ごめん…。不安にさせたね」
足早にベッドに近づくと、俺の乱れた髪を払いのけながら何度も唇を啄んだ。
「お前が疲れて少し落ち着いたから、眠っている間に方々に連絡をしていたんだ。もちろん蓮の会社にも発情期休暇の申請をお願いしておいたよ。俺の方も休暇をとったから、ずっと一緒にいられる……」
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