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「ホント?」
「あぁ…。それと病院で処方された誘発剤も飲ませた。それと……」
「なに?」
「――小岩先生に、なるべく精子を子宮に留めておくようって言われたから……」
「この栓のこと?」
「あぁ…。アナルプラグをしておいた。これで俺の精子は無駄に流れ出ることなく蓮の中にいられる」
布団をめくり、俺の後孔に埋められたプラグを指先でぎゅっと押し込んだ時、先程射精した青い匂いが寝室に広がって、俺は頬が熱くなるのを感じた。
未だに手に纏わりついたままの粘度の高い白濁に気付いた壮登は、恭しく俺の手を持ち上げるとそれを舌先で丁寧に舐めた。
「いやぁ……壮登っ」
「誘発剤はちょっとした刺激でも射精してしまうらしい。薬が効いている証拠だよ……」
「そう……なのか?俺……体が、変になったのか、と」
「大丈夫。いつもの発情期だよ……」
耳朶を甘噛みしながら囁く壮登の声が鼓膜を震わせる。
そのままベッドに倒れ込んだ彼は俺の脇腹を何度も優しく撫でた。
その手がポッコリと膨らんだ下腹に差し掛かった時、のけぞった首筋に唇を押し当てて言った。
どのくらい吐き出したのか分からない量の精子があることは一目瞭然だ。
「ここに……俺の精子が泳いでる。お前の卵を探して……。でも、蓮の卵は選り好みが激しいみたいだ。なかなか自分に見合った精子に出会えずにいる……」
「壮登……。ごめん」
「謝ることはないよ。それは大事なこと。だって、俺とお前の子供だよ?そのくらい真剣にならなきゃ意味がない」
彼はチノパンのポケットに手を入れると、そこから小さなビロードの箱を取り出した。
それを俺の前に差し出して、ゆっくりと箱を開ける。
中には銀色の細いリングが二本入っていた。
「――これ、は?」
リングの片方を指先で摘まみ上げて、俺の左手をそっと取り上げると薬指に嵌めた。
「――ピッタリ。苦労したよ……サイズ合わせるの」
「へ?」
「それに、なかなかデザインが絞り切れなくてね……。時間がかかってしまった」
左の薬指の根元で光るリングにそっと唇を寄せて、目を伏せたまま囁く。
「――本当なら、半年前に渡さなきゃいけなかった結婚指輪。やっと……繋ぎ止めた」
「壮登……」
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