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時間はかかるが、その日のうちに結果が出ると聞き、せっかく取った休暇を有効利用すべく、再び呼ばれるのを待った。
何より、俺たちの体の状態を早く知りたかった。
液晶パネルに再び番号が表示されたのは、検査終了から二時間以上経っていた。
結果は――。
俺も壮登も体には全く異常は認められず、むしろ彼の精子数と品質はαの中でも最上位ランクに位置付けられるレベルだった。
「こんなことをお伺いするのは失礼かと思いますが、望月さんは何か悩み事でもあるんでしょうか?お二人にこれだけ好条件が揃っているなんて、ここに来る患者さんではあり得ないんですよ。工藤さんも……何か思い当たることは?」
そう問う小岩医師に壮登は首を傾ける。
考えを巡らせているのか、ゆっくりとした口調で確かめるように言葉を紡いだ。
「私は何も……。もし何かあるとしたら彼の方の要因が大きいってことですよね?」
「一概には言えませんが、その可能性は考えられますね。受精する母体側が完全でなければ……」
「あのっ!俺は何も……っ。今は十分幸せですし、彼も愛してくれてますっ。心的要因なんて何もありません!」
沈みかけた空気を一掃すべく俺は声をあげた。
人前でこんなことを言うのは恥ずかしかったが、今は言葉にしなければ壮登を不安にさせるだけだ。
「――そうですか。では、しばらく様子を見ましょう。幸い望月さんの発情期も狂いなく周期的に来ているようですし、タイミングを見計らって性交してください」
医師とは言え、他人に面と向かってセックスしろと言われるのは気恥ずかしい。
しかし、それが仕事であり、他人に対してそう言わなければならない彼の事を思うと、自分の考えを恥じた。
「焦らなくても大丈夫ですからね。まだ期間はありますし」
「分かりました。ありがとうございました」
「一応、望月さんのホルモンを増やすために誘発剤を処方しておきます。発情期になったらすぐに飲んでください。あと……何か不安な事があったらすぐに連絡下さい。予約をすぐに入れるように手配しておきますから」
にこやかに受診票と処方箋書類を手渡した小岩医師に一礼して、俺たちは診察室をあとにした。
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