心の声

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 壮登が寝言で呟いた言葉とまるで同じことを彼に問いかける。  そのせいで自分が妊娠出来ないというのなら、いっそハッキリさせた方がいい。  でも、彼に面と向かって伺うことは憚れる。  それによって上手くいっていた俺たちの関係に深い溝が出来るような事だけは絶対に避けたい。  かといって彼の同僚に聞いたり、興信所に調べてもらうのも、ハナから浮気を疑っているようで後ろめたい。  何より、それを知った時の彼の顔を想像するだけで体が震える。  知りたいと思う気持ちと、知りたくないと目を背けたくなる想いがひしめき合う。  背中に彼の寝息を感じて、そっと体の向きを変えて向かい合う。  利発そうな額にかかった黒い前髪がさらりと滑り落ちる。  長い睫毛、鼻梁が通った凛々しい顔は、目を閉じているだけでこんなにも印象が違うものかと思う。  仕事中はこげ茶色の瞳をギラギラと輝かせて精力的に業務をこなし、家に帰ってくるなりその様相はナリを顰め、優しく穏やかになる。  そして、俺を抱く時は、生まれながらに引き継いだ獣の血が目覚め、眼光強く野性味を帯びる。  長く伸びた爪と鋭い牙が俺の体に“証”を残していく。  深く食い込む牙を感じるたびに、俺の体は歓喜に震える。  愛されている……と。 「壮登……」  唇を震わせて小さく囁き、冷たい手で彼の頬に触れる。  疑いたくはない。でも……。  不安に揺れる夜は、俺の眠りをまた妨げていった。
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