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『――――』
それは何事かを口にした。だけど、俺には呻き声にしか聞こえなくて、戸惑う。
言葉だったのだろうか。俺に向けて言われた? 心臓が早鐘を打つように高鳴っている。唾も飲み込めない緊張が俺の身体を支配した。怖い、とも違う、これは、畏れにも似た。
そんな俺に、ぴょんと飛び乗って来た子竜は満面の笑み。
「ままー、ぱぱ、が、おはよー、って!」
パパが、おはようって。
俺の頭は緊張と混乱でいっぱいになり、一瞬、思考を放棄した。目の前の子竜の、期待と希望、喜びに満ち溢れた瞳だけを見つめた。前も後ろも上も下も分からないような疑問の海に放り出されて、一つだけ掴みとれたもの。
黄金色。俺たちがいる空間を覗き込む、巨大な竜。
――それが、俺を母親にした竜らしかった。
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