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4. 「ママ」と「パパ」
俺の身体にはタコの足のように動く蔓が絡みつき――その一部は下半身に巻き付き、酷く簡易的ではあるが服の代わりになってくれた――、それまでいた場所から下へと降ろされようとしていた。その際に子竜がきゅうと鳴いたので、腕を伸ばして抱いてやる。子竜は俺の腕に嬉しそうに飛び込んできたが、同時に下からはどよめきのようなものが起こった。
真っ白な石でできた舞台の上に降ろされると、駆け寄って来たのは、小さな……人ではない何か。背丈は俺の半分ほどしかなく、顔は、蛇やトカゲといった類の生き物に似ていた。白いローブから除く手は白い鱗に覆われている。
「よう生き残られました」
分かる言葉を発されたことに、俺は少し安堵をした。少し離れたところにいる竜たちが口々に何かを言っているようだが、俺には一つも理解できないのである。低い呻き声、咆哮、鳴き声というのが一番近い。異国の言葉、とは全く違う。言語にさえ聞こえない。
ただ、歓迎されてはいないのだろうな、とだけ感じられる彼らの声が響き渡る中、涼しい顔をする白いローブの者たちは全部で三匹いて、そのどれもが全く同じ顔をしているように見えた。
爬虫類独特の瞳が、揃って俺を見ている。
「私はサン。儀式を司る者」
「私はヌイ。森を保つ者」
「私はクク。〝継ぎの竜〟を看る者」
三匹……、いや、三人が順番にぺこりと頭を下げた。言語を操る姿、恭しい仕草。「人」と認識するのが相応しいように思う。俺もつられて頭を下げて、
「〝継ぎの竜〟……?」
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