6. スタートライン、家作り

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6. スタートライン、家作り

「そちら、カゼマユムシの糸で紡いだベッドになります。軽いうえに頑丈で、熱も寒さも通しません。同じ素材の御布団もどうぞ。ちなみにそのローブはミズマユムシの糸で出来ています」 「……風と水で何が違うんですか?」 「カゼマユムシの糸はほとんど重さがなく持ち運びに便利ですが、水に弱いのです。湿気などは大丈夫なのですが……。ミズマユムシは耐水性に優れていますが、少々重いです」  説明してくれているのは、クク。  白い鱗と真っ黒な丸く大きな目。背丈は俺の半分くらいで、長い尻尾をゆらゆら揺らす。〝継ぎの竜〟の儀式を司る祭司の一人で、トカゲ族、というものらしい。森の奥にいる今の「継ぎの竜」と、新しく生まれた継ぎの竜――「エメ」と名付けたところ大喜びで自分の名前を連呼していた――の世話が主な仕事で、ついでに俺の面倒も見てくれる。  「継ぎの竜」への謁見から、一夜が明けた。俺は今、ククたちが暮らす小さな社にいる。俺とエメが昨日一晩だけ泊まらせてもらったここで、これからの生活にいるであろう物を次々に持って来て説明してくれているのである。  彼はなんだか、最初の堅苦しい印象とは打って変わって、随分と親しみ深い雰囲気だ。
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