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「カゴがあると何かと便利ですよ。このカゴ、丈夫ですので水に濡れても大丈夫ですし、踏み台にしても壊れません。試しに乗ってみてください」
「……ホントだ」
「でしょう。それからこちらは紐です。大人の竜が引っ張り合いをしても千切れない優れものです。ご活用ください。それと……、ああ、こちらは扱いにご注意を。これはエダキリムシの顎から作ったナイフです」
「エダキリムシ?」
「虫と侮ってはいけませんよ。大木の枝を一日がかりで切り落とす虫です。大人の竜でも噛まれれば流血ものです。私などはすっぱりです。あ、虫は苦手でいらっしゃいますか?」
「いえ、特には……」
「それは良かった! では、こちらは虫除けの香ですが、吸い続けるのも身体にいいものではありませんので、ご使用は夜だけに。この森、結構虫がいますから。まあロワさまのように大きな竜がいれば近付いて来ませんがね。あ、エメさまが吸っても問題ございません。舐めるのはちょっと、よした方が良いかもしれませんね」
こんな調子で、ククは饒舌に説明してくれた。ベッドから服、日用品まで。時々出てくる聞いたこともない生物の名前は、そういうものだと納得をすることにした。名前が分かり易いから不都合はない。
「いろいろとご丁寧に、ありがとうございます。これ、全部手作りですか?」
「はい! 私とサン……、あ、サンは一番年長の祭司ですが、彼と二人で作りました! 特に織物は得意です。道具が壊れたり、そのローブが破れたりしたら、すぐにお申し付けくださいね」
俺は今、ククからもらった白いローブを着ている。その手触りは滑らかでほとんど重さを感じない。手首が出るほどの長さの袖と、尻のあたりまで覆ってくれる裾。ボタンやファスナーどころか継ぎ目が見当たらない不思議な構造で、腰回りには紐を巻く。さっき手渡されたエダキリムシのナイフは何かの革のホルダーに入れられていて、俺は言われるがまま腰紐に引っ掛けた。なるほど、持ち歩きやすいし邪魔にもならない。ローブの下には、これまたククからもらったインナーを着ていた。ぴたりと肌に吸い付く素材は、少なくとも俺は今までに見たことのないものだ。足には頑丈だが薄く軽い靴。全て手作りだと言う。
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