6. スタートライン、家作り

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 ロワとエメが見つけてくれたのは、川の傍にある洞窟だった。  洞窟と言うよりも、丘の横っ腹に開いた穴だ。ロワも翼を畳めば入れるし、横たわることもできる。奥を見ると窪まった狭い空間があり、そこから細い通路が十メートル近く伸びていた。他の生物が寝床にしていたようだが、もう長い間誰にも使われていないようだとククは言う。  ここにあなたさまの寝所をお作りになるのがよろしいですよ、と満足げだった。 「ベッドの大きさを少し調整しましょう。もう少し大きい方がすっぽり入りますからね」 「ええ、ありがとうございます……」 「川も近いですし、いい立地です。何かご不安はありますか?」  ご不安、の前に、流石に俺は洞窟で寝泊まりしたことはない。現実味が湧かないなりにこれから始まる生活について懸命に考えたが、雨は防げそうだし、風の強い日は奥の通路の一番奥に避難すればいい。上を見上げても崩れそうな様子はないし、コウモリもいないし、取り立てて危険を感じるようなところはなかった。 「ここについては何も。火と食糧はどう調達すればいいですか?」  ククは何でもないことのように頷く。 「はい、火はエメさまに覚えて頂きましょう。大丈夫、一日二日あれば吐けるようになりますよ。食糧は、ノエさま、――狩りのお勉強をいたしましょう」 「えっ」 「おべんきょー!」  エメはご機嫌だ。広い洞窟の中を走り回って、ぽてりと転ぶ。ロワがすぐに抱き起こしたが、エメは泣くでもなく元気に笑っていた。卵の中で十年を過ごしたからか、産まれたばかりの発達段階ではない。人間で言えば、三、四歳くらいじゃないだろうか。  ……しかし、狩りの勉強、ときたか。釣りくらいならできるけど。多分、さっき見せてもらったエダキリムシの顎ナイフとやらを使うんだろうな……。 『――――』 「ままー! ぱぱが、だいじょうぶか、だって!」  気遣われるのは嬉しいのだが、何せ状況が俺の対処能力を軽く凌駕して有り余る。  強がりでも、大丈夫だよ、と言うしかなかった。
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