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「……これですか」
「おお! そうです、掘り出しましょう! 身体を傷付けてしまうと汁が飛び出てしまいますので、周りの土から崩していって……」
「汁、というのは、毒があったり?」
「いえいえ、美味しいので無駄にしたくないという理由で」
まあ、話している対象が芋虫でなければ分かる心理なので、納得しておく。
俺が掘り出したアマイモムシは、両手で抱える必要があるほどに大きかった。形は、どちらかといえば甲虫の幼虫に近いだろうか。孤児院で土いじりをした時に見たことがあるし、虫は別に苦手ではないとはいえ、流石にこのサイズは気味が悪い……、と言ってしまうのは横で「大きいですね、甘くてとっても美味しそうですね!」と嬉しそうに手を叩いているククに悪いから、ぐっと言葉を呑み込んだ。
ククもすぐに自分の分を掘り当て、俺たちはそれぞれ一匹ずつを抱えて、エメの待つククたちの社へ戻る。
エメと一緒に出迎えてくれたサンは「よう頑張りました」と俺を労ってくれた。ククは「では食事の時間ということで」と、ほくほくと社の中へ入っていった。
俺はエメの目の前にアマイモムシを下ろす。
「食べ方、分かる?」
「かぷっとたべていいの?」
「汁が飛び出るって言ってたけど……」
答えを求めてサンを見やると、それでいいと頷かれる。エメは素直に、アマイモムシにかぶりついた。
勢いよく……汁が……。
俺は思わず無言で後退し、少し離れたところにあった倒木に座り、ゆっくりと、目を閉じた。
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