夏模様

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「土方さん。起きてますか?」 声を掛けられてハッとする。 慌てて自分の身なりを確認すると、あの浅葱色の羽織はもうない。 気付いたら寝ていて、随分懐かしいことを思い出していたみたいだ。 そうだ。俺は今、函館にいるんだ。新撰組は実質もうなくなった。 ドォンッーー。 「大砲の音、響きますね。嫌な音だ」 「ああ。本当に……喧しい」 新政府と旧幕府の戦いは函館まで追い詰められていて、俺達は函館の五稜郭に陣を置いている。 ここでの戦いもいつまで持つかはわからない。 俺はただ、与えられた仕事を全うするだけだ。ここまで来て、折れるわけにはいかない。 にしても池田屋か。嫌な事、思い出したな。 これから戦に出るというのに、気が滅入ってしまう。 新撰組はもうない。死んだ者もいれば、抜けた者も。 近藤さんだってーー死んでしまった。 だったら副長の俺が代わりを務めるしかない。 最期の最期まで、俺だけは諦めるわけにはいかないんだ。 「土方さん、そろそろですよ」 「わかった」 未だに慣れない洋装に身を包んで、腰には刀を差して、俺達は戦いの地へと赴く。
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