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砲撃の音や銃の音。
刀で戦う時代はもう終わりだというように、音や弾が飛び交っている。
暦の上では春だというのに、函館の地は身を震えさせるほどの寒さが残っていた。
「俺は、最期まで戦う。見ててくれよ、近藤さん」
時代遅れだとわかってはいるが、刀片手に敵に立ち向かう。
「うおおおおおおっ!!!」
敵は斬っても斬っても減らない。それでも良い。
足が止まるまで、俺は戦い続けるだけだ。
パァンッ。
「がはっ……」
銃弾をまともに脇腹にくらい、膝から崩れ落ちる。
俺もとうとうここまでか。……なあ、近藤さん俺は充分戦ったよな。
ドォンッ……パンッーー。
砲撃と銃声が混ざり合って、花火に似た音に聞こえる。
……こんなんじゃ喧しくて、死ぬに死ねねぇ。苦しむだけじゃねぇか。つくづく花火には縁がねぇ。
「トシさん」
「あ?」
俺の名を呼ぶ、女の声。
当たり前だけれどここに、女は一人もいないはずだ。
だけど不思議な事に、地に這いつくばる俺の横には和服に身を包んだ女が座っている。
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