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「ーー灯(ともり)」
「……本当、火に縁があるんだな。名前の通り、あったけぇ」
喧しい花火が呼んだ一つの縁。
一度目は切なさを。
二度目は悲しさを。
そして三度目は、愛しさを。
「灯。次目を開けた時、あんたは俺の傍にいてくれるか?」
「ええ、もちろん」
「そうか。それなら安心して、眠れるよ。ありがとな」
重い瞼を閉じると、灯の手が俺の頬に触れる。
これから死ぬってのに怖さが微塵もないのは、多分灯のお陰だ。
「死ぬ間際までそんな真っ直ぐな目してるなんて。やっぱりトシさんの目は綺麗。……お疲れ様」
その声を最後に、俺の意識は途切れた。
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