夏模様

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「あの、すみません」 「あ?」 不意に、背後から声を掛けられる。高くてよくとおる、女の声。 振り向いて見ると思わず言葉を失ってしまい、 「私の顔に、何か付いてます?」 そう尋ねられるまで、一言も口にすることが出来なかった。 真っ黒で艶のある黒髪を後ろで一つお団子にして、肌は対照的に真っ白で。 夏も半ばに差し掛かっているというのに日に焼けている様子が全くない。 切れ長の目に薄く紅をひいた唇。 藍色に朝顔の模様の浴衣は、彼女の顔立ちのせいかぐんと大人びて見える。 「いや、何も。……それよりなんか用か?」 「私、河川敷に行きたいんですけど……江戸に来るのは初めてで道がわからなくて。おまけに連れともはぐれてしまって」 つまり迷子ってことか。めんどくせぇ。
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