夏模様

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祭りで人が多いとはいえ、少し道を間違えればそこは暗くて、女の一人歩きでは何が起こるかわからない。 現に人もあまりいないものだから、何かあっても助けてくれるなんてこともないだろう。 「……案内するよ」 またあの喧しいところに戻る羽目にはなるが、放っておくこともできまい。 了承すると女は目を細めてニコリと笑って、ありがとう、と。 「笑うと子供っぽいな」 「え?」 「いや、なんでも」 「本当助かります。あ、ええとお名前は……」 「歳三」 「歳三……トシさん、ですね」 女が、トシさん、と呼んだのがやけに俺の耳に心地良く響く。 女の名前は……まあ良いだろう。どうせ短い付き合いだ。 「よろしくお願いします」 微笑んだ顔に、僅かだが胸が高鳴った。
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