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歩きながら、女は楽しそうに江戸に来てからの事を話している。
総司があーだこーだと話しているのは喧しいと感じるのに、不思議とこの女にはそう思わない。
「江戸は活気があって良いですねぇ」
それは、この女の柔らかい話し方の所為なのか。
「トシさん、聞いてます?」
「あ、ああ」
まただ。名前を呼ばれると、胸が疼く。
こんな風に思うのは初めてで、この女の存在に戸惑いを覚える。
「あんた、江戸に何しに来たんだ?」
「……お世話になった方に会いに来たんです」
さっきまでの笑顔は嘘のようになくなり、悲しげな表情へと変わってしまう。
不味い。地雷を踏んだようだ。
「……そうか。まあなんだ、その、江戸の花火見てそれから……」
言葉が上手く続かない。
その様子に気付いたのか、ニコリと笑って、大丈夫ですよ、と言う。
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