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ーーー数年後、京。洛陽動乱(池田屋事件)当日。
「こんな日に斬り合いですかぁ。めんどくさい。今日はお祭りなんですよっ!」
また駄々をこね始めたのは総司だ。
攘夷志士達の集まりがあると聞き、場所もかなり絞られた。
今夜、そこに乗り込み斬り合いになることはまだ言ってはいないが、皆とっくにわかっていることだろう。
「花火も上がるっていうのに。知ってます? 今日の花火はかなり大きいらしいですよ!」
「んなもん見てる場合じゃねぇ。最も、俺達の足音やらなんやらを隠すには最適だがな」
……花火、か。
あの日以来花火は見ていない。
見れば、あの女の事を思い出してしまうから。
たった数刻だけ過ごした女にいとも簡単に心を奪われ、それを今の今まで忘れられない俺は馬鹿な男だ。
「トシ、そろそろだぞ」
「ん? ああ……わかってる」
近藤さんに声をかけられ、余計な事を頭から振り払って俺達は戦の支度をした。
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