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もう花火は始まっていた。
必死に探しても人混みの中じゃ柚葉はなかなか見つからず、今に至る。
人気のない花火鑑賞スポット……神社の境内の裏。
薄暗く気味の悪いここには人なんて寄り付かず、いつも先約はいない。
でも、ここは花火を見るのにはうってつけで、静かにその全体像を見ることが出来る。
柚葉と来たかった……
柚葉と一緒に花火を見て、
「綺麗だな」
って言って、
柚葉はそんなこと俺が言うと絶対
「らしくない」
って言うから笑って。
あーあ、何でこうなっちゃうんだよ。
賑やかな人の声、祭囃子に花火の音。
全てが胸高鳴る音のはずなのに、柚葉が隣にいないってことだけでこんなにも寂しい音に聞こえる。
小さく座りながらその大きな花火を見ても、ただただ虚しいだけで心は沈んでいく。
「……柚葉」
「何?」
誰かが返事をした。
振り向くとそこには探していなかったはずの柚葉が赤色のヨーヨーを持って立っていた。
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