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「あっ、次ラスト」 そう柚葉が言ってから、一際大きな声音と共に、黒い空に大きな花火が打ち上がる。 最後に咲いた花火は夏の余韻を残し、空から消え散っていく。 一瞬咲くために、その空に。 「朱寧、帰る?」 「おう、花火終わったしな……」 ……ほんとは帰りたくない。 まだ、この夜を終わらせずに柚葉と。 そんな気持ちが伝わったのか知らないが、柚葉が立ち上がりながら俺にいう。 「また来年、来ればいいだろ」 来年。 「そうだな」 俺も来年また来たいよ。 柚葉と一緒にもう1度…もう1度だけ花火見たい。 俺だって…………!! 手を握りしめ、ヨーヨーの輪ゴムがくい込む。 ……ほんとに、柚葉は。 薬指にある…… 力をこめればすぐに切れてしまう輪ゴム。 輪ゴムであっても、そのカタチはリングにもとれて。 ちょっと嬉しくなって。 暗い夜空に手をかざし、ヨーヨーが揺れる。 「これ、なんで赤色?」 少し先を歩く柚葉に問いかければ思いもよらない返事が返ってきた。 「朱寧だからだよ。茜色」 「そっか」 まるで当たり前のように答える柚葉。 ちょっとでも俺のことを考えてくれていたのが嬉しくて、それと同時に悲しくも思えて。 もっと一緒にいたい。 そんな想いだけが積もっていく。 「また、来年来ような……」 そう呟いた。 涙が滲む夏の空。 側には柚葉と茜色のヨーヨー。 花火に消えた煌めく星は瞬く間に姿を表し、空に世界をつくる。 ───俺の最後の夏。
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