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「おーす!はよ」
「んー、はよー」
今日も俺は何も変わらず登校する。
あの余命宣告から1週間がたった。
あの後もう一度親と病院に行き、これからを決めた
親は泣き崩れながら俺の言葉を聞き、それに俺はただ答えていった。
──余命半年は短い。
1年もない。
余命通りなら今年の冬に死ぬ。
高校を卒業出来ずに、春を迎えずに死ぬ。
俺がどう足掻いても死ぬ。
俺だって泣いた。
嫌だと思った。
余命宣告から3日は整理がつかなかった。
無理に決まってる。死ぬなんて言われたんだ。
けど、
「おはよう朱寧」
「おはよ、柚葉」
柚葉が俺の思考を止めた。
「嫌だ」「どうして」「なんで」と、それしか考えられない俺の真っ白な脳内に柚葉が浮かんだ。
困惑した。柚葉がいることが。
こんなにも現実を逃避した俺の考えに柚葉がいることが。何も考えたくなかった。現実のことなんて。
一度考え出すと止まらなかった。
どんどん頭が柚葉でいっぱいになる。
柚葉とは中2からずっと一緒のクラスで、1番つるんでいたヤツ。仲が良かった。
俺みたいにチャラく無くて冷静クールな男。
一緒にいて楽で、楽しかった。
そんな柚葉で染まる。
染めていくのは柚葉との想い出ばかりで。
柚葉の笑顔、泣き顔、悔しそうな顔、苦しそうな顔、楽しそうな顔、怒った顔……
あーあ、何でだろう。
俺しか知らない顔を見たい。
「朱寧?クラス入らないのか?」
「あ?あー、入る入る!悪ぃな!」
そう思ったら気づいて止まらなくなった。
たぶん今まで知らないふりしてたんだ。
じゃなきゃここまで染まらない。
「………ったく、やっぱ好きだわ」
延命治療はしない事にした。
しなくたって俺は生きる。
それに
───柚葉が好きだから。
少しでも一緒にいられるように。
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