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──夏
「柚葉!!夏休み暇だろ?どっか行こーぜ!」
放課後、途中まで帰り道が一緒の柚葉に言った。
「いつも取っかえ引っ変えの女連れて行け」
「俺は女遊びやめたんだよ!!だから暇なんだって!なぁなぁ、遊ぼうぜ柚葉!!」
「お前がやめれるわけないだろアホ」
「やめれるに決まってんだろばぁぁか!」
…………お前が好きなんだから。
お前にしか視線がいかないんだよ。バカ柚葉。
もう1ヶ月が過ぎた。
人生の長さって片手で足りるんだなぁ……
死ぬなんてどうでもよくなったわけじゃないけど、余り考えなくなった。
今は柚葉とどうやって一緒にいるか、会話をするか、遊びに誘うか、隣にいられるか………って。
「しょうがないな。どこに行きたいんだ?」
「夏祭り!!!!」
想い出を作るのに必死なんだよ。
「それこそ女と行けよ」
「やだ」
「どうせ、行ったとしても途中でお前は消えるだろ。女に連れていかれて」
「んな事ねぇから、行こーぜ!」
「女と行ったほうがそういうのは楽しいだろ」
「だから!!俺は柚葉と行きたいんだよ!!」
何でこいつはこいつは!!
人が必死に誘ってんだろ!!!
うんって言えばいいだけなのに!!
「マジでチャラ男やめたのか?熱出るぞ」
「でねぇーし!!」
素直でストレートにものを言う柚葉は、俺みたいに求めてくれる人全てに優しい声を囁いているような適当な男じゃない。
そういう所も好きなんだと思う。
…………俺には足りないことだから。
「はぁ……女に連れていかれたら即帰るからな俺は。精々頑張るんだな朱寧」
「大丈夫!!じゃあ、決まりな!またLINEする」
「あぁ、またな」
そんな言葉で俺と柚葉は別れた。
後ろ姿もカッコイイんだよ………ばぁか。
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