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──夏祭り当日(夜)
寝れないと思ったら案の定寝れなくって、眠りについたころには空が薄明るくなっていた頃だと思う。
おかげで今日はお昼すぎに起きてしまった。
んで、俺は今柚葉を待っている。
学校の近くの少し大きめな神社でやる、この街で一番大きな夏祭り。毎年賑わっている。
今まで夏祭りなんて、そのへんの女の子に誘われてテキトーに楽しんで、テキトーに帰ってきてたけど、今日は違う。
待ち合わせより10分早くついてしまった。
俺の横を通り過ぎて行く浴衣の美人さんや、家族連れには目もくれず、ただこれから来る柚葉のことを考えていた。
中学の時に1回だけ……1回だけここよりも小さな祭りだったが、一緒に行ったことがあった。
今よりもどこかぎこちなかったけど、楽しかった。
楽しかったな……
「朱寧」
そんな過去に更けていると、俺を呼ぶ声がした。
大好きな……声。
「お待たせ朱寧」
「いーよ、柚葉」
制服でなく、かと言って浴衣でもない私服の柚葉。
その姿は今まで何度か見てきたはずなのに、俺の鼓動がはやくなる。
好き
…って自覚してからとする前じゃ何もかもが違う。
「何ぼーっとしてるんだよ?行くぞ朱寧」
「何でもねぇーよ」
「そ、ならいいよ」
「とりあえずなんか食お?」
「言うと思ったわ」
そう言って柚葉は笑う。
人混みに混じりながら、屋台を目指し二人で歩く。
日もゆっくり傾いて、空をつつんでいる。
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