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「そうだ、闘うぞ。武器があるじゃないか。これでお前が殺せるということは、あいつも血が流れるということだ」
おれは収納棚の中身を眺めた。
玩具ではない本物の銃が並んでいた。
自動小銃を手に取ると、鋼鉄のずっしりした冷たい感触が伝わってきた。弾倉を抜くと実弾が詰まっているのがわかった。
「本気なの?信じられない」
「麗子のためさ。よくわからんが、気力が充実してるんだ。どうすればやっつけられるか作戦会議だ」
「あいつを甘くみちゃだめ。映画みたいにカッコよくはきまらないよ。おじちゃん、本当に銃を使えるの?」
おれは肩をすくめた。
「いや、撃ったことなどないよ。でもボーガンならできそうだ」
「なんだあ、ハッタリだけかあ」
少女は呆れたように笑った。
「このショールを首に巻いてみて。おじちゃんは兵士になった気分になれると思うよ。でも、訓練は必要ね」
麗子は紫色のショールをとりだして、おれによこした。
やわらかで日向くさい匂いがした。金や銀の刺繍糸が複雑な模様をを描いていたが、指で辿るようなまねはしなかった。
マフラーのように首に巻くと、あっというまに、景色が一変した。
そこはジャングル地帯だった。
深い茂みに囲まれた空き地のような場所。
おれは自動小銃を肩に当て、立射の構えをしていた。遠くに標的が見える。
そばで教官らしき男が号礼をかけた。
「かまえーっ。
てーっ!」
乾いた銃声が響いた。
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