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「よしてくれ。おれはお前の境遇には同情するが、人殺しにはなりたくない。麗子はおれをだまして、母親を殺させたな。五歳の知能じゃない」
「そう言うと思ったわ」
少女は差し出した手を引っこめた。
「疲れた。少し休みたい。神殿のそばまでいきましょう。あそこには食べ物と飲み物があるの。あったかい布団もあるのよ」
麗子の目から溢れる血の涙はすでに乾いていた。黄色く濁った瞳は不気味で、幼い子のきらめくような光沢を失っていた。
それでも、おれは一筋の光を与えられないか、必死になって考えた。
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