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結局、翌朝まで寝込んでしまった。
頭痛の原因になりそうなショールを枕代わりにして、何時間も寝てしまったらしい。
おれは起き上がり、シャワーを浴び、歯を磨き、身支度を整えた。
独り身だから、時間は自由に使える。
おれは表へ出た。
どんよりした雲が垂れている。
雨になるかもしれない。
おにぎりとサンドイッチ、それに飲み物と雑誌を買いに、コンビニまでの通りを歩く。
きょうは一日中家で、ごろごろしてすごすつもりだ。
ガールフレンドもいないし、これといった趣味もない。我ながら、つまらない男なのだ。
コンビニへ行く途中に、昨日のぼろ市会場だった公園広場がある。
そんなに大きな広場ではないが、催し物にはいい按配の広さなのだ。
緑豊かな木々と池。花壇もある。
季節ごとの花で、華やかに彩られる空間だった。
公園の向こう側は、標高わずか100メートルの城山があった。
いちおう街のシンボルだが、登る者はほとんどいない。
頂上まで行っても見晴らしがよくないからだ。見えるのは、ビルの壁ばかりだからである。
だが、今日に限って、城山の方角から子供たちのはしゃぐ声がしきりなしだった。
ときおり甲高い笑い声も交錯する。
公園広場を横目に過ぎようとした時、池のわきで人影が蹲っているのが眼にとまった。
その人影はすぐにころんと横倒しになった。
赤いものが周囲に散っていた。
まさかと思い、おれは駆け寄った。
中年とおぼしき男性が、頭と首から血を流していた。両手で頭を守っていたが、その両手も赤く染まっていた。無数の切り傷が皮膚を抉っている。
眼を見開いた状態だった。
死んでいた。
おれは急いでズボンのポケットに手をつっこんだ。
ケータイをとりだすつもりだった。
ない!
思い出した。家の充電器にセットしたままだったのだ。
回りをみまわした。
公園には誰もいない。
公衆電話を探すか、通りすがりの人間に頼むしかなかった。
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