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女子特有の、【相談】やら【報告】という名目の支離滅裂なエンドレス・トークだったが。
私は、彼女に嘘をついた。正確には、自分自身にも嘘をついた。
私は電話を切る時に、こう言ったのだ。
『でもさ。【夏の思い出】かな…。』
そう言って、笑った。
【夏の思い出】の意味する事は。
彼とは、先がないと言う事を隠喩している。
この、田舎で過ごす時間だけの…淡い恋物語。
例え、お互いに気持ちを確かめて…それこそ身も心も結ばれたとしても。
【この世界】だけの関係を示唆している。
いかにも割りきって、短い恋心を思い出にする前提の言葉。
確かに、現実的には。
そういう結果になる可能性は高い。
それは、結果において。
この気持ちを、自分なりに足掻いて向かえる結果においてだ。
現在進行形なのに、私はすでに終わった形を口にしていたから。
しかも、そんな事は願っていなかったのに。
夏に始まったこの恋を、終わらせたくない気持ちを伝える事が出来なかった。
ガールズトークなのに。
一番、好き勝手に本音を言っていい場所と相手だったのに。
私は…嘘をついていた。
それが、自分の中で。
少し、引っ掛かっていた。
そんな事は、望んでいなかったのに。
プランはないにしろ、諦めたくはないのに…だ。
そんな自分が、少しだけ嫌だった。
片思いでもいいから、なし崩しには終わりたくなかったから。
それだけ、彼は私の心に入り込んでいる事にも気が付いた。
この気持ちに、終わりがくる事が恐かったのかもしれない。
……はぁ……。
少し早い胸の鼓動を感じながら、何回も寝返りを無意味に打っていた。
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