彼の想いも世界からはみ出した

5/42
前へ
/450ページ
次へ
キスをした後…。 ゆっくりと唇が、離れ。 暫くお互いに、何も言わずに見詰め合っていた。 軽トラのライトしかない、薄暗い庭先で。 私も、おかしな脱力感に見舞われていた。 感情だけが、激しく揺れ動いていた行動だったけど。キスをしているうちに、そんな余計なものは何も考えられなくなっていた。 だから、そんな感情を全てぶつけた行動の後は…。 場違いに、ふぬけたボンヤリとした状態になっていたのかもしれない。 『……おやすみ。』 彼は囁く様に言うと、少し私から離れた。 『…おやすみ。気を付けてね…。』 車のドアに手をかけた彼に小さく答えた。 『…明日…な。』 明日の約束を確認する様に言った。 私は【うん】と言う様に頷く。 特別な会話はなかった。 彼の車の光が見えなくなるまで、ボンヤリ見ていた。 そして、思い出した様に家の中に入った。 着替えをして、布団をひいて…。 そこまでは、何も考えずに習慣的な行動をとる。 だけど、布団の上に座り。今日の終わりを感じた、変な安堵をおぼえたら…。 急激に、今夜の出来事が頭の中で早送りに再生されて。 それと共に、妙に平静だった心が爆発的に騒ぎだす。 『…キス…しちゃった…。』 まだ、会って間もない相手と。 彼氏でもないし、それに近い相手とも言い難い相手と。 真剣には、真剣な気持ちではあるが。 なんの【前置き】もなく、突然そんな事になった経過を考えると。 非常にど偉い事を、しでかした気分だった。 やはり、キスなる行動は。特別な相手とする事で。 それなりに、下準備というか…。 そういう、流れから導かれる行動ではないか? 特に、最初は! そんな恋愛マニュアルな発想を抱いていたら。 1人では抱えきれずに、彼女…ミキに連絡をしていたのだ。
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加