彼の想いも世界からはみ出した

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……この匂い。 車内に仄かに香る。 お祭りの時に、彼のサムエから香ったものと同じ。 これは、伯父さんの家の香りなのだろうか。 落ち着く、品が良い【和】の香り…。 彼の外見からすると、どちらかと言うと【洋】な感じなのだが。 その香りは、自然に纏っているかの様な気がした。 『…何か臭いの?』 無意識に鼻をヒクヒクとしていたのか? 『え?違うよ。いい匂いがするから…。』 そんな会話をしていたら。 道路の様子が、変だった。渋滞…し始めた。 車線が減少しているのか、全て左車線に車が入ってきて混み合っている。 『…事故?』 『…さあ。…検問?』 前の方を見ると、赤いパトランプが見えた。 数台パトカーがいる様子。 警察官らしき制服の人間が、車を誘導させて止めていた。 『…飲酒な訳ないから、事件かな。』 彼がポツリと呟く。 こんな真っ昼間の田舎のバイパスで、飲酒検問は確かにないだろう。 やはり、事件…が妥当? でも、私達には関係ない。警察から見ても、見るからに容疑者には思われないはずだ。 せいぜい、無免許でないかを気にされるくらいだろう。 渋滞はしてたが、目ぼしい車はいない様で。 検問はスイスイ進んでいた。 私達の番になる。 『申し訳ありませんが、そこの駐車場に入って頂けますか?』 開口一番で言われた。 コンビニの駐車場。 パトカーが3台停まっており、赤いライトの棒を振りながら【こっち】と言う様に誘導される。 私と彼は、一瞬、顔を見合せた。 私達だけ、念入りな検問を受けるのが解ったから。 他の車は、免許を提示するとあっさりと通過していた。 ……何で??? 最も事件性のない、私達。ただの若者だ。 それも、普通の若者。 パッと見て怪しいところはない。
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