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『覚えてるよ。前後の席だった天城だろ?』
彼は笑っていた。
覚えているのは、当たり前だろう。クラスメートを卒業して半年で忘れる人の方が珍しい。
墓穴を掘る。こういう事?
でも、私の場合。自分の墓の穴を掘った上に墓石に名前まで刻んだ気分だった。
『そう、天城です。実はお願いがあるんだけど!!』
こういう時…異様に早口で高圧的になるのかな。
不躾の極み。中学の時と変わらないじゃない。
『お願い?出来る事ならいいよ。』
神山君は、穏やかな落ち着いた口調で会話をしてくれた。よく考えたら、かなり品行方正な男子だった。確かにモテていた部類なのに、浮ついた行動は聞いた事はなかった。
『学校の友達が、合コンしたいんだって!!神山が、カッコいいからって頼まれたの!!嫌ならいいけど、私のお願いなんだけど!!』
…終わった。
自分じゃない自分が、会話している。こんな傲慢な依頼が、世の中にあるだろうか?
ないよ…絶対に…あり得ない。
『いいよ。うち、男子校みたいなもんだし。何人集めたらいい?』
神山君…ごめんなさい!!
と、心の中で何回も謝った。その後は、あんまり覚えてないけど。携帯のメルアドなんかを交換した。
なんで、普通に話せないんだろう。
私は、ただ高校生になっただけだった。
あの頃と同じ。
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