第1章 にわか雨

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『覚えてるよ。前後の席だった天城だろ?』 彼は笑っていた。 覚えているのは、当たり前だろう。クラスメートを卒業して半年で忘れる人の方が珍しい。 墓穴を掘る。こういう事? でも、私の場合。自分の墓の穴を掘った上に墓石に名前まで刻んだ気分だった。 『そう、天城です。実はお願いがあるんだけど!!』 こういう時…異様に早口で高圧的になるのかな。 不躾の極み。中学の時と変わらないじゃない。 『お願い?出来る事ならいいよ。』 神山君は、穏やかな落ち着いた口調で会話をしてくれた。よく考えたら、かなり品行方正な男子だった。確かにモテていた部類なのに、浮ついた行動は聞いた事はなかった。 『学校の友達が、合コンしたいんだって!!神山が、カッコいいからって頼まれたの!!嫌ならいいけど、私のお願いなんだけど!!』 …終わった。 自分じゃない自分が、会話している。こんな傲慢な依頼が、世の中にあるだろうか? ないよ…絶対に…あり得ない。 『いいよ。うち、男子校みたいなもんだし。何人集めたらいい?』 神山君…ごめんなさい!! と、心の中で何回も謝った。その後は、あんまり覚えてないけど。携帯のメルアドなんかを交換した。 なんで、普通に話せないんだろう。 私は、ただ高校生になっただけだった。 あの頃と同じ。
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