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軽い虚栄心なのか、合コンにこぎつけなければならない使命感にとらわれた。
よく考えたら、別に言い訳や、嘘はいくらでも出来たはずなのだ。
だが、元来…嘘つきタイプではないので真面目に実行を検討していた。
家に帰り、名簿を穴があく勢いで睨み付けていた。
なんて言えばいいんだろう?
急に小さな自分が、顔を出した。今まで、男女問わずにワイワイ出来ていた。
多分、恋愛というジャンルは苦手科目なんだろう。
興味はあるが、体験がなく知らない科目。
人間知らないものを、無意識に避ける場合がある。
多分、そうだったのだろう。
だが、虚栄心が勝ったのか思い切ってダイヤルを押した。
コールの間、留守を願った。そうすれば、相手からあとでかかってくる可能性がある。かかってきたら、普通に話せる気がした。
なんの根拠も、ないが。
『はい、神山です。』
男子の声が、受話器ごしに聞こえた。
かなり、アウトな展開だ。彼、本人が出た。
神山家は、母子家庭で妹がいる。つまり、男子が出た時点で確定だ。
とにかく焦って、言葉が出なかった。
『もしもし?』
切られるか、切るかの選択肢が頭をよぎった。
『もしもし!!お久しぶりです。1年7組でクラスメートだった天城です!!』
かなり、ひく第一声に我ながら目眩を覚えた。
『お…覚えていないなら、いいんだけど!!用事があったけど、大した事じゃないから!!』
…死にたい。
…やだ、激ダサい。
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