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今夜の仕事が終わり、由希乃はまっすぐ向かいの弁当屋に向かった。
相変わらず、ぽつねんと店内カウンターに多島くんは立っていた。
まだ叔父さんが戻ってこないみたいだ。
「あの……」
「おかえり、由希乃ちゃん」
「た、ただいま」
「プリン、残ったの食っちゃったよ。新しいの出そうか」
「た、たべ……ちゃったんですか」
由希乃は赤面した。
「ん? とっといた方がよかった?」
「そ、そそそ、そうじゃなくって」
「えーっと……イヤ、だった? 俺と間接キスとかすんの」
「べ、べつにイヤじゃないけど……」
「一応これでも食べ物扱ってるでしょ。だから、食べ物を粗末にするのイヤなんだよね」
「はあ……」
「別に由希乃ちゃんと間接キスしたいから食ったわけじゃないんだよ」
「そ……ですか」
「由希乃ちゃん」
「は、はい!」
「よく戻ってきてくれたね」
「……あの、謝りたくて……」
「いいよ別に。俺が、由希乃ちゃんのオーダーに応えられなかった、そういうことだから」
「そういうことって……そんな言い方……」
「俺にぐらい、わがまま言ってもいいじゃない。甘えられる人、いないんだから」
「……でも、やっぱ、それって、あの、えっと……」
「うん」
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