3 多島くんの時間と私の時間と

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「いやいやいやいや。俺の調べたところ、女子の人は、手帳や手紙、ノートをこういう風にデコると。さっき文房具屋で買ってきて、そのあと店番しながら書いてたんだけど、さすがに俺毎回これだと疲れるんで……その、使い方の見本と考えてもらえると助かる。……どう?」 「やります!!」 「そっか。ありがとう。ノートっていう物体があるかぎり、それ以上にお互いを縛るものは存在出来ないからね。……それに、風情があっていいでしょ?」 「うん」 「じゃ、よろしくね」  多島くんは、にっこり笑った。 「ところで、どうしてメッセだとあんなに文が固いんですか?」 「え? ああ……俺、論文とか技術資料とかそういうの書いてばっかで、柔らかい文章ってあまり書いたことないから……驚かせちゃった?」 「あはは……中身が別の人かと思っちゃった」 「興味、ある?」 「論文?」 「まさか。――違う俺について、とか」  肩を抱き寄せ、耳元で低音ボイスでささやく多島くんに、由希乃は息を呑んだ。 「続きは交換日記で? ということで」 「うん……よ、よろしく……です」  ちょっとだけ彼の悪魔的な部分を垣間見て、 (ヤバイ扉を開けちゃったのかも……)  と、ドキドキする由希乃だった。                                (了)
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