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「いやいやいやいや。俺の調べたところ、女子の人は、手帳や手紙、ノートをこういう風にデコると。さっき文房具屋で買ってきて、そのあと店番しながら書いてたんだけど、さすがに俺毎回これだと疲れるんで……その、使い方の見本と考えてもらえると助かる。……どう?」
「やります!!」
「そっか。ありがとう。ノートっていう物体があるかぎり、それ以上にお互いを縛るものは存在出来ないからね。……それに、風情があっていいでしょ?」
「うん」
「じゃ、よろしくね」
多島くんは、にっこり笑った。
「ところで、どうしてメッセだとあんなに文が固いんですか?」
「え? ああ……俺、論文とか技術資料とかそういうの書いてばっかで、柔らかい文章ってあまり書いたことないから……驚かせちゃった?」
「あはは……中身が別の人かと思っちゃった」
「興味、ある?」
「論文?」
「まさか。――違う俺について、とか」
肩を抱き寄せ、耳元で低音ボイスでささやく多島くんに、由希乃は息を呑んだ。
「続きは交換日記で? ということで」
「うん……よ、よろしく……です」
ちょっとだけ彼の悪魔的な部分を垣間見て、
(ヤバイ扉を開けちゃったのかも……)
と、ドキドキする由希乃だった。
(了)
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