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仕事を終えた由希乃がコンビニにやってくると、いつもどおり弁当屋のエプロンをつけた多島くんが待っていた。
「お疲れ、由希乃ちゃん」
「ども」
「中はいろっか」
「はい」
多島くんは由希乃を店内のイートインへと促すと、コーヒーメーカーでホットコーヒーを二つ淹れた。いまだ由希乃は機嫌が悪いようだ。
「ほい」
由希乃の前にカップを置くと、多島くんは彼女の隣に腰掛けた。
「ありがとう」
「あのさ……」
「うん」
「返事返せなくてごめん。それで……なんて書いたの? いま返事するよ」
「やだ、口で言うとか……はずかしいじゃん」
「なんだよそれ……。とにかく今日はちゃんと返事出すから。機嫌直してよ」
「……うん」
「俺、ああいうの慣れてないから……その、すぐ忘れるし、メールならまだ見るんだけどさ、SNSは……」
由希乃がどんどんむくれ顔になっていく。
「あ、あの、だけど、その、これからはちゃんと見るから、だから、ごめん」
「うん。せめて、朝、それでもだめならお昼には……返事欲しい」
「わかった」
由希乃はうん、とうなづいた。
多島くんは、困ったなあという気持ちと、やっぱりなあ、という気持ちでカウンターの向こう、ガラス越しの夜の道を眺めていた。
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