1 多島くん、つながれない

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 仕事を終えた由希乃がコンビニにやってくると、いつもどおり弁当屋のエプロンをつけた多島くんが待っていた。 「お疲れ、由希乃ちゃん」 「ども」 「中はいろっか」 「はい」  多島くんは由希乃を店内のイートインへと促すと、コーヒーメーカーでホットコーヒーを二つ淹れた。いまだ由希乃は機嫌が悪いようだ。 「ほい」  由希乃の前にカップを置くと、多島くんは彼女の隣に腰掛けた。 「ありがとう」 「あのさ……」 「うん」 「返事返せなくてごめん。それで……なんて書いたの? いま返事するよ」 「やだ、口で言うとか……はずかしいじゃん」 「なんだよそれ……。とにかく今日はちゃんと返事出すから。機嫌直してよ」 「……うん」 「俺、ああいうの慣れてないから……その、すぐ忘れるし、メールならまだ見るんだけどさ、SNSは……」  由希乃がどんどんむくれ顔になっていく。 「あ、あの、だけど、その、これからはちゃんと見るから、だから、ごめん」 「うん。せめて、朝、それでもだめならお昼には……返事欲しい」 「わかった」  由希乃はうん、とうなづいた。  多島くんは、困ったなあという気持ちと、やっぱりなあ、という気持ちでカウンターの向こう、ガラス越しの夜の道を眺めていた。
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