2 それってありえない?

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 帰宅した由希乃は、バスタブの中で激しい自己嫌悪に陥っていた。 「私のバカバカバカ……。多島さん、なにも悪いことしてないはずなのに……」    ……ぶくぶくぶく。  目の下までお湯に浸かって、口から泡を吐く由希乃。 「でも……やっぱ返事返してくれないのって……なんか雑に扱われてる気がしちゃって……」  ……ぶくぶくぶくぶく。  いくらお湯の中で泡を吹いても、気が晴れることはなかった。  由希乃が風呂から上がると、スマホに通知が……。 「あれ? もしかして……」  急いでトークアプリを開いてみると、多島くんからだった。 「うあ……長文……」  ひと目で数百文字あるのが分かる。  改行が少なくて、漢字が多くて、びっしり……。 「そんな……」  それは、多島くんからの、初めてのラブレターだった。  正直、由希乃には少々重いと感じるほどの。 『気に障るようなことをしていたら済まない。謝るよ。  俺はこういう、ショートメッセージの類に慣れておらず、知らずに君を傷つけていたのかもしれない。本当に済まない。  頼む。出来れば、君と顔を合わせて話がしたい。  俺は本気で君のことを愛している。この気持ちに偽りは一切ない。  由希乃ちゃん、このまま君と疎遠になるのは絶対に嫌だ。  君と別れるなんて耐えられない――』  文字で語る多島くんは、普段からは全く想像出来ないほど、固くて、愚直で、大人で、男で、饒舌で、情熱的で……。  普段は照れ屋なくせに、この差は一体???  由希乃は多島くんに返事を送った。 『でも、顔を合わせてると言いにくいこともあるし……』  素直に許すのもしゃくだし……と思っていると、すかさず返信が。 「うそ……。まだ起きてたんだ」  由希乃は驚いた。 『そうか……なるべく君の意に添えるよう努力する。お休み』  今度は、思いのほか短い返信だった。  怒らせちゃったかな、と少し心配になった。
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