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帰宅した由希乃は、バスタブの中で激しい自己嫌悪に陥っていた。
「私のバカバカバカ……。多島さん、なにも悪いことしてないはずなのに……」
……ぶくぶくぶく。
目の下までお湯に浸かって、口から泡を吐く由希乃。
「でも……やっぱ返事返してくれないのって……なんか雑に扱われてる気がしちゃって……」
……ぶくぶくぶくぶく。
いくらお湯の中で泡を吹いても、気が晴れることはなかった。
由希乃が風呂から上がると、スマホに通知が……。
「あれ? もしかして……」
急いでトークアプリを開いてみると、多島くんからだった。
「うあ……長文……」
ひと目で数百文字あるのが分かる。
改行が少なくて、漢字が多くて、びっしり……。
「そんな……」
それは、多島くんからの、初めてのラブレターだった。
正直、由希乃には少々重いと感じるほどの。
『気に障るようなことをしていたら済まない。謝るよ。
俺はこういう、ショートメッセージの類に慣れておらず、知らずに君を傷つけていたのかもしれない。本当に済まない。
頼む。出来れば、君と顔を合わせて話がしたい。
俺は本気で君のことを愛している。この気持ちに偽りは一切ない。
由希乃ちゃん、このまま君と疎遠になるのは絶対に嫌だ。
君と別れるなんて耐えられない――』
文字で語る多島くんは、普段からは全く想像出来ないほど、固くて、愚直で、大人で、男で、饒舌で、情熱的で……。
普段は照れ屋なくせに、この差は一体???
由希乃は多島くんに返事を送った。
『でも、顔を合わせてると言いにくいこともあるし……』
素直に許すのもしゃくだし……と思っていると、すかさず返信が。
「うそ……。まだ起きてたんだ」
由希乃は驚いた。
『そうか……なるべく君の意に添えるよう努力する。お休み』
今度は、思いのほか短い返信だった。
怒らせちゃったかな、と少し心配になった。
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