3 多島くんの時間と私の時間と

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 放課後。  由希乃が、バイト前にいつものコンビニに寄ると、店頭で缶コーヒー片手に毎日自分を待っている多島くんがいない。 「どうしたんだろ……こんなの初めてだよ」  自分が困らせたせいなのか、もう愛想つかされたのか、でもだったらあんなラブレター送ってこないだろうし――と、頭の中がゴチャゴチャになってくる。 「どうしよう……いじわるしたからかな……」  不安を抱えたまま、走って弁当屋まで来ると、 「あ! いた!」  カウンターの中に多島くんが。  慌てて店内に入ると、少し照れくさそうに声をかけてきた。 「やあ、おつかれ。ごめんね、叔父さんがちょっと留守だから店あけられなくて」 「なんだあ……むっちゃ心配して損したあああ」 「俺のこと? ごめんね。叔母さんが具合悪くて、叔父さんが病院に連れて行ってるんだよ」 「そう……」 「ん、どうかした? 麦茶でも飲む?」 「いらない」 「まだ機嫌直らない? プリン食う?」 「それ売り物でしょ」 「俺のおごりで」  結局由希乃はプリンで餌付けされてしまった。 「ねえ……由希乃ちゃん」 「なんですか(もぐもぐ)」 「どうしたら機嫌直してくれる?」 「……そういう、問題じゃ……ないし……」 「じゃあどういう問題? やっぱ具合悪いの?」 「ちがうし」 「あのメッセージでは伝わらなかったのかな……。正直、何が正解か分からないんだ。頼むから、教えてよ」 「つ、伝わったというか……まあ、伝わって……るけど」 「足りなかった?」 「わ、わたしだって、わかんないし! どうしてこんな……わかんないし……」  由希乃は泣きながら飛び出して、向かいの本屋に駆け込んでいった。  正直、多島くんの愛が重すぎる由希乃だった。 「マジかよ……。もう、俺の方が泣きたいよ」  途方に暮れつつ、由希乃が半分残したプリンを急いで掻き込む多島くんだった。
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