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由希乃が泣き顔を隠しながら、本屋の更衣室に駆け込むと、同僚の女子大生が着替えをしていた。
「どうしたの、由希乃ちゃん! あ、もしかしてお向かいの人とケンカした?」
「ううう……」
図星なので、こくこくとうなづくしかなかった。
「どーしたのかな? おねーさんがきいたげるよ?」
「あ、あのね……」
由希乃は一部始終を同僚に話した。
「あーまー、ぶっちゃけ悪いのは由希乃ちゃんだよね。だけど彼氏と繋がりたい気持ちも分かる。でもそれって、クラスメートとか由希乃ちゃんサイドの理屈とか方法で、だよね?」
「私サイド……?」
「つまり、彼氏はそういうのに慣れていないし、そもそもルールを知らないの。なのに、お前はルールを破って自分を悲しませたーって怒るのは筋違いでしょ?」
「ああ…………」
「まだ納得出来ないかな。えっとね、さすがに十歳も離れてると、コミュニケーションの方法そのものが違ってきちゃうのよ。それに、時代に合わせて変わっていけるかどうかってのは個人差がとても大きい」
「うんうん」
「そもそも、彼氏ともっと仲良くなりたい、彼氏のことをもっと知りたいから、そういうことしたくなったわけでしょ? だったら目的を見失って、最悪別れることにでもなったら、本末転倒。――そんな未来、イヤでしょ?」
「……ヤダ」
「少なくとも彼は由希乃ちゃんに本気だから、大丈夫だとは思うけど、もっと彼氏の立場に立って、過度な押しつけはしない。お互いの望みを摺り合わせる。それが、男女交際を長続きさせるコツなのよ」
「す、すごい……。でも、なんでそんなに詳しいんですか?」
「うふふ。お店にある『SNS疲れ解消法』って本に書いてあったから」
「なーんだ、受け売りかあ~」
「いいじゃない。知識は使うためにあるのよ」
「そっか……。ありがとうございます!」
同僚は手を振って更衣室から去っていった。
「そっか……。多島さんには、こういうの、合わないのかあ……しらなかった……」
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