1 多島くん、つながれない

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1 多島くん、つながれない

「多島さん、SNSなにやってます? ラxン? イxスタ?」 「いや俺ケータイ持ってないから……」 「えええ!!!」 「由希乃ちゃん、声おおきい……」 「ご、ごめんなさい……」      ☆  フリーターの多島くんと、女子高生の由希乃は、商店街でバイトをしている年の差カップルである。現在交際歴は三ヶ月。  多島くんは、資格試験の勉強の傍ら叔父の経営する弁当屋で、由希乃はそのお向かいにある本屋で毎日バイトをしている。  由希乃はバイトが終わったあと、商店街のコンビニのイートインで多島くんとプチデートをするのが日課だった。      ☆ 「だって俺、家には光回線のパソコンとIP電話あるし、ポケットWi-Fiとタブレットがあれば外でもネット出来るんでスマホとかあんま必要がないというか……」 「そーいう話じゃなくってえ」 「ん?」 「普段はこうして休憩時間に会ってるだけだから、あんま長く話とか出来ないし……。っていうか、スマホで連絡取る人とかいないの?」 「あはは……」  多島くんは苦笑した。帰国して以来、友人と連絡も取らず日々過ごしてきたので、通話やメッセージアプリでやりとりする必要がなかったのだ。 「い、いなくても、べつに悪いとかそういうんじゃなくて……その……」 (も、もしかしてぼっち? 私、悪いこと聞いちゃったかな……) 「ふむ……。それじゃあ、ぜんぜん使ってないんだけど、アカウント教えるから。それでいい? ただ、返事はリアルタイムとかムリだからね」 「やったー! ありがとう、多島さん!」 「お、おう……」  微妙に不安がよぎる多島くんだった。
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