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クローンという言葉を口に出す記者の言葉に、少し生えた無精髭をやはり二人同時に触りながら今度は左の所長が口を開く。
『私が柊所長のクローンです』
記者の食い付きぶりとは対照的に面倒くさそうに二人の柊所長は対応する。
無数のシャッター音が記者会見場を占拠する。
「に、人間のクローンを作るということは重罪であることはご承知でしょうが、あなたは罰せられることを前提にクローン人間を作り出したということでよろしいのでしょうか?!」
そう、クローン人間の研究は重罪である。
ましてや、クローン人間の精製など研究を禁じられてる以上、許されざる所業である。
記者の問いかけにも動じない二人。
何故なのか。
彼らにしか見えない未来の着地点が見えているのだろう。
「記者のあなた方が見えているものが真実、そして、横のクローンの彼は今この場に生きている! 彼の生きる権利を誰が奪うのだ?」
少しオリジナルの柊所長の声のトーンが上がると同時に、無数のシャッター音が一斉に止まり、一瞬の静寂に包まれる。
一瞬の静寂の後に、また記者達のひそひそ話が始まり記者会見場の雰囲気を元に戻した。
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