第一章 クローン法

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ーー西暦3075年ーー 「先生!」 東京都、大臣官邸。 先生と言われた男は車に乗り込み、車の中にある画面に向かって喋る。 「自由党会館へ向かってくれ」 ウィーン。 機械音と共に車のドアが開き続けて先生と言った女が乗り込んできた。 「もう橘先生! 私を置いていっても本日の予定は分からないですよね?」 車はドアが閉められて車の中の椅子が動き、間に机が出てきてお互いに正面で向き合う形で椅子が止まる。 そして、運転手もいないが車は発車を始めた。 いつもの朝、いつもの時間に出る車。 「今日の予定は?」 橘は寝癖もついていない髪にワックスを塗りながら女に話しかける。 「えー本日は、クローン法検討委員会が午前8時半より3時間」 「3時間!?」 3時間がよほど長いと感じたのだろうか? びっくりして、手がすべり車の窓にワックスがついてしまった。 「はあ……橘先生! あなたはクローン法推進大臣なんですから当たり前です! えーそれから、午後からクローン法検討委員会の報告記者会見、その後、首相官邸にて首相との会議となっております」
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